元早大総長が集団結婚を徹底批判 統一教会
桜田淳子 山崎浩子に ダマされるな
週刊文春 1992.7.16 村井資長 193-195頁
小誌がスクープした山崎浩子の結婚を逆手にとって、統一教会が巧みなPR作戦を展開している。夕レン卜桜田淳子、バドミントンの徳田敦子の相次ぐ〝集団結婚志願〟に浮き足立つマスコミに、八十三歳の硬骨漢が待ったをかけた。〝客寄せパンダ〟に踊らされるな!
長年、統一協会を糾弾してきた者として、最近の統一協会ブームを大いに憂えています。
ブー厶の発端は、山崎浩子、桜田淳子、徳田敦子の三人が、あいついで集団結婚するとマスコミに発表したことにある。
八月二十五日に予定されている統一協会の「合同結婚式」とは、結婚する相手は教祖の文鮮明が決め、結婚式が始まるまで配偶者が誰なのかさえわからないといぅもの。こんな〝結婚〟は、誰が考えても正常とは言えない。
それなのに、マスコミ特にテレビ番組の多くは、有名女性の結婚をもてはやし、統一協会側から意図的に流される結婚相手に関する情報に乗せられ、結果的にこの協会を美化している。
聞くところによれば、テレビ局は、高視聴率が取れる「合同結婚式」を中継したいがために、あえて統一協会に批判的な報道は避けるのだといぅ。なんと嗅がわしいことか!
このままでは、ブー厶に乗せられた若い未婚の男女が入信し、新たな被害者を作ることになってしまぅ。実際、三人が結婚すると伝えられてから、入信の問い合わせが増えたと伝えられています。
入信した信者のほとんどは、印鑑、壺、多宝塔、朝鮮人参、珍味などの訪問販売をしているのが実情です。
「手相を見ます」「悩みはありませんか」「聖書に興味はありませんか」などと言葉巧みに近づき、「先祖のたたりがある」「印相を変える必要がある」などと因縁話で脅かして数万円から数十万円もする印鑑や、安い大理石の壺を何百万円で売りつける。
たった大サジ一杯の塩を〝聖なる塩〟と統一協会員が言って、老人にニ千万円で売りつけた例もありました。
また、信者になると莫大な献金を要求される。たとえば、息子に嫁が来ないことを悩んだ農家の母親が、「文鮮明教祖が嫁を決めてくれる」と誘われて、五千八百万円の大金を献金して財産を失ったこともある。この母親は現在、統一協会に返金を要求しています。
韓国や欧米諸国では、この手の霊感商法は行われていません。唯一日本で集められた金が、世界の統一協会の資金となっている。そのことは、小切手密輸事件に関して神戸地裁でも、米下院のフレーザー委員ム衣でも明らかにされています。
それは、「日本人は罪人の子孫だから、韓国人にどんな犠牲を払っても償わなければならない」といぅ統一協会の教えによっている。この協会では、大部分の日本人は韓国人のための金集めの奴隸としてしか見られていないのです。
マスコミに反省を促したい
今や、統一協会の信者による霊感商法にダマされた被害者から、多くの損害賠償訴訟が起こされています。
昨年五月には、絵画、毛皮、羽毛布団などを買わされたうえに、土地を売ってまで献金した二人の女性が提訴し、初めて統一協会が八千三百万円を支払って和解したことがあった。
信者もまた被害者なのかもしれない。元信者の一人は、「結婚に必要な資金を集めるために、三、四時間の睡眠時間で印鑑や壺、珍味などを売り歩いたが、月に五千円から一万円の小遺いしかもらえなかった」と後悔している。「合同結婚式」に参加するためには、最低百万円から百四十万円の費用がかかるのです。
わずかな小遣いでは、とうてい結婚費用は稼げない。すると、信者は親からもらってくる。それを信者は「親から祝福された」と誇る。しかし、私の知る限りでは、家族から反対されたケースの方が圧倒的に多い。
そうやって結婚しても、相手が好きなタイプとは限らない。国籍が違うこともある。
今度、合同結婚式が行われる韓国では、「日本女性と結婚できる」とか、「農村の嫁不足解消のため」とかの口実で信者を募っていると伝えられます。
もし、嫌いな夕イプと結婚させられても、「愛せない相手を愛することが勝利」と教えられ、つらい結婚生活を強いられることになる。相手が好きな夕イプだったとしても、夫婦はしばしば別々の任地で活動し、家庭生活を営むこともできない。
それでも信者が納得して結婚するのは、最初に文鮮明と信者の新婦が〝結婚〟するといぅ不思議な形態を取るからです。この〝結婚〟によって清められた新婦が、今度は新しい男と〝結婚〟することによって清められる――そのよぅに〝洗脳〟されているよぅです。
結婚生活に耐えきれなくなった元信者の中には、離婚訴訟を起こした人もいます。
私が代表世話人をつとめている「原理運動を愛慮する会」が七月三日に記者ム衣見したのは、統一協会の実態を一般の人に知ってほしいと同時に、マスコミに反省を促すためもあった。
ちなみに「原理運動」とは、統一協会の活動の総称です。統一協会は、大学や高校では原理研究会を作り、政治的には勝共連合を組織している。
統一協会は、正式には世界基督教統一神霊協会といぅ。「基督」の看板を掲げてはいるが、キリスト教とは似て非なるもの。文鮮明がクリスチャンでもなければ、キリスト教的なところはまったくありません。だから私は、「統一教会」ではなく「統一協会」と書きます。
私が、原理運動と出会ったのは、昭和四十七年十一月に早大で起きた革マル派による川口大三郎君リンチ殺人事件がきっかけでした。当時、私は早大総長だった。
その年の暮れに、川口君の母親が「セミナ―ハウス建設要望書」を持って来ました。後で聞くと、原理研の学生が母親を説得して書かせたものだといぅ。
年が明けてからは、原理研の学生が毎週のように自宅にやって来て、家内に原理運動を講義するようになった。
当時の私たち夫婦は、原理研のことをよく知らず、世間で言われていた「子供が突然いなくなる親泣かせの団体」くらいに思っていたのです。
私は、「川口君を記念し、暴力の否定、青年の友愛と協力の場になれば」と、伊豆にあった私名義の別莊地を提供してしまった。建設費用は、大学から母親に支払った六百万円の見舞金と、原理研系の「早稲田学生新聞会」が街頭カンパした募金が当てられたと思います。
桜田ら有名人は特別扱い
「川口記念伊豆セミナーハウス」は、五十一年四月に完成。ところが、それから一年ほど経ってからセミナ―ハウスの謄本を取ってみると、なんと統一協会の「修練場」となっていた。母親が館長になるという約束も守られなかった。母親は信者になることを拒否したからです。
私たち夫婦も原理研にダマされた。その原理研と縁を切るために、止むを得ず別莊地を安く売るしかなかったのです。
そしてその直後に、新たな問題が生じました。彼らはセミナーハゥス建設委員会の連名で、建物と土地を統一協会に寄進する旨の「お願い書」を捏造していたのです。
建設委員だった家内が署名、捺印した事実はまったくないし、川口君の母親も同様で、「お願い書」は明らかに私文書偽造です。しかも、家内と川口君の母親を除いた残りの建設委員四人は、原理研の幹部だった。
私は、このことを週刊誌で明らかにした。すると統一協会は、逆にその記事を「名誉毀損」だとして、私と出版社を東京地裁に告訴した。裁判は八年かかったが、全面勝訴しました。
その間の五十三年十一月、世間に原理研の危険性を知ってもらうために、「原理運動を憂慮する会」を作って代表世話人に就任しました。五十六年には、「大学・高校関係者に訴える」という文書を全国五千力所以上の学校に送付しています。
その頃から、原理研は大学や高校では鳴りをひそめている。しかし、原理運動は「アジア平和婦人連合」や「天地正教」などと名を変え、いま流行の「自己啓発セミナー」に形を変えて生き残っているようです。
親韓派の自民党代議士や民社党代議士に取り入ったり、統一協会員が次々に議員秘書になっているのも問題です。
入管法五条には〈日本又は日本国外の国の法令に違反して、一年以上の懲役刑に処せられた者〉という入国禁止条項がある。それにもかかわらず、アメリカで脱税容疑によって収監された文鮮明が、例外として今年三月に来日できたことは、なぜ糾明されないのでしようか。
こんなに問題の多い統一協会なのに、有名女性三人が〝客寄せパンダ〟のごとくにマスコミに登場した。
彼女たちのよぅな有名人は、統一協会では「あなた方は神から選ばれた人」と崇められている。彼女たちの虚栄心をくすぐって、特別扱いしているのです。彼女たちは「睡眠時間三、四時間で印鑑や壺を売る」よぅな苦労をすることはない。一般信者とは違って、最初から一種の〝幹部〟なのです。
私は山崎、桜田、徳田の三人が、個人的に誰にも迷惑をかけずに信仰しているのなら、何も言いません。
しかし、彼女たちは現実に統一協会の宣伝をして、被害者を作る手助けをしている。私は彼女たちに、今回の記事を通して警告したいのです。