統一教会 – 日本宣教の戦略と韓日祝福
櫻井義秀・中西尋子 著
- 単行本: 604ページ
- 出版社: 北海道大学出版会(2010/3/24)
- ISBN-10: 4832967207
- ISBN-13: 978-4832967205
日本宣教50年の実態を学術的に解明!
日本は金のなる木か !?
韓国の新宗教がなぜ日本社会で勢力を拡大できたのか?
年間数百億円の資金調達を可能にした宣教戦略とは?
日本の女性信者約7000名が合同結婚式で渡韓したわけは?
[日本学術振興会研究・出版助成図書]
●本書の特徴
脱会した日本の元信者と祝福(結婚)によって韓国に嫁いだ現役信者への聞き取り、統一教会関係訴訟資料から、教団の宣教戦略、信者の入信・回心・脱会過程、信者の信仰と生活構造を総合的に分析、霊感商法や脱会支援など社会問題への示唆も多く含む、本邦初の研究書。
著者について
櫻井義秀(さくらいよしひで)
1961年山形県生まれ
1987年北海道大学大学院文学研究科博士課程中退
2004年より北海道大学大学院文学研究科教授
単著
『東北タイの開発と文化再編』北海道大学図書刊行会、2005年
『「カルト」を問い直す』中央公論新社、2006年
『東北タイの開発僧――宗教と社会貢献』梓出版社、2008年
『霊と金――スピリチュアル・ビジネスの構造』新潮社、2009年
『死者の結婚――祖先崇拝とシャーマニズム』北海道大学出版会、2010年
編著
『よくわかる宗教社会学』(三木英と共編)ミネルヴァ書房、2007年
『カルトとスピリチュアリティ――現代日本における「救い」と「癒し」のゆくえ』ミネルヴァ書房、2009年
『社会貢献する宗教』(稲場圭信と共編)世界思想社、2009年
『現代タイの社会的排除――教育、医療、社会参加の機会を求めて』(道信良子と共編)梓出版社、2010年
中西尋子(なかにしひろこ)
1964年大阪府生まれ
1997年龍谷大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学
現在関西学院大学、関西大学、京都女子大学、阪南大学等非常勤講師
分担執筆
「祖先祭祀」谷富夫編著『民族関係における結合と分離』ミネルヴァ書房、2002年
「民族と教会――在日大韓基督教会の事例」宗教社会学の会編『宗教を理解すること』創元社、2007年
●目次
はじめに
1 顕示的布教から正体を隠した勧誘へ /2 キャンパス内勧誘に揺れる大学 /3 統一教会を研究する意義 /4 本書の構成
第部 統一教会の宣教戦略
第一章 統一教会研究の方法
一 宗教研究の方法
1 宗教概念と現実の宗教団体との乖離 /2 宗教社会学の視点と統一教会分析の視座 /3 信者の宗教行為と教義、及びその実践論
二 統一教会に関わる学術的研究
1 統一教会研究の難しさ /2 イギリスの宗教社会学 /3 アメリカの宗教社会学 /4 日本における統一教会の研究 /5 宗教調査と教団との関係
第二章 統一教会の教説
一 宗教的教えを見る視点
1 教典宗教と実践宗教 /2 『原理講論』と文鮮明
二 『原理講論』に説かれた教説
1 創造原理 /2 堕落論 「創世記」の物語 /3 不倫なる性関係としての堕落 /4 復活のための諸前提 /5 復帰摂理 /6 摂理的同時性の時代 /7 再臨論
三 『天聖経』に見る霊的世界
1 『聖本』・『天聖経』
四 統一教会の信仰実践
1 祝福 /2 万物復帰 /3 統一教会の教説と東アジア文化
五 統一教会の宗教文化に関する検討
1 韓国の新宗教研究 /2 統一教前史の明確化 4/3 福音のアジア的文脈化?
第三章 統一教会の教団形成と宣教戦略
一 統一教会の宣教戦略を見る視点
1 土着化に成功した宗教運動 /2 社会問題化する宣教 /3 資源動員論的視点
二 統一教会の宣教戦略の展開
1 日本統一教会の創設 /2 資金調達の戦略 /3 人的資源獲得の戦略 /4 教勢の衰退と資金調達方法の変化 /5 日本の統一教会が経済活動に専心するに至った要因 /6 祝福家庭の子供達と統一教会
三 民俗宗教を併呑する新宗教
1 教祖カリスマの形成 /2 資源導入される教団 /3 呪的カリスマの形成 /4 宗教家になりきれない霊能者 /5 霊石愛好会から天地正教へ /6 擬装された儀礼 /7 弥勒信仰に動員された人々 /8 弥勒の郷造成計画と地域の反対 /9 天地正教のその後 /10 統一教会に試された北海道の宗教
第四章 統一教会の事業戦略と組織構造
一 宣教戦略論と教団発達論
1 グローバルな経営戦略論と統一教会 /2 教団発達論の展開 /3 発達モデルから経営モデルへ
二 統一教会の宣教戦略と事業多角化
1 統一教会の組織・活動 /2 教団形成初期における資源の有無 /3 宗教市場における競争力 /4 多角化戦略の成果
三 日本の統一教会の組織構造
1 初期の事業多角化 /2 事業組織と教会組織の複合体 /3 地区組織の活動 /4 地区教会の事業運営 /5 教区・教域の運営
四 摂理とグローバルな経営戦略
1 グローバル化戦略と組織の編成 /2 摂理システムにおけるグローバル化戦略 @/3 現在の教会活動
五 統一教会とはいかなる宗教組織なのか
1 教団成長モデル /2 統一教会は宗教組織か経済組織か
第五章 日本と韓国における統一教会報道
一 統一教会とメディア
二 記事の比較方法
1 比較の視点 /2 『朝日新聞』と『朝鮮日報』 /3 記事検索の方法
三 『朝日新聞』・『朝鮮日報』に見られる統一教会報道
1 日本での宣教開始から大学生・青年への伝道期―期(一九五〇―六〇年代)/2 政治領域への参入―期(一九七〇年代)/3 経済活動(霊感商法)の活発化―期(一九八〇年代)/4 教勢の停滞・カルト問題化―期(一九九〇年代)/5 最近の統一教会―期(二〇〇〇年以降)
四 日本と韓国の統一教会報道の差異
1 日本における統一教会報道 /2 韓国における統一教会報道 /3 宣教戦略の相違
第部 入信・回心・脱会
第六章 統一教会信者の入信・回心・脱会
一 研究の方法
1 信仰の物語 /2 脱会者の類型 /3 裁判資料をテキストにする
二 統一教会信者の入信・回心・脱会のパターン
1 どういう人が信者になるのか /2 調査対象者の基本的属性 /3 入信の経緯と信者のライフコース /4 イベントの時間的経緯
三 統一教会特有の勧誘・教化
1 正体を隠した勧誘 /2 手相・姓名判断 /3 ビデオセンター /4 ツーデーズセミナー /5 ライフトレーニング /6 フォーデーズセミナー /7 孝行を要求する神 /8 セミナーの構造 /9 新生トレーニング /10 信仰規律 /11 実践トレーニング /12 演繹的思考と帰納的思考 /13 伝道 /14 信仰強化のメカニズム /15 マイクロによる訪問販売 /16 神体験と限界突破 /17 信仰が生まれるとき
四 統一教会における霊界の実体化
四–一 霊能師になった信者
1 霊能師 /2 霊能トーク /3 霊能師が現出する霊界 /4 霊能師達の心情
四–二 清平の修練会
1 清平修錬苑 /2 先祖解怨式 /3 役事 /4 病気治し
五 統一教会の祝福
1 祝福の原理的意味 /2 祝福の過程 /3 祝福の教団組織上の機能
第七章 統一教会信者の信仰史
一 元信者のライフヒストリー研究
1 証言は事実を語るか /2 ナラティブ研究の新展開 /3 研究者の立場性 /4 筆者の立場性
二 青年信者 自己実現と改変された記憶のはざまで
1 元信者A(女性)の事例 /2 元信者B(女性)の事例
三 学生信者 学生と統一教会
三–一 原理研究会の学生
1 原理研究会 /2 元信者C(男性)の事例 /3 元信者D(男性)の事例
三–二 地区教会の学生信者
1 元信者E(女性)の事例
四 祝福を受けた信者 合同結婚式の理想と現実
1 元信者F(女性)の事例 /2 元信者G(女性)の事例
五 壮婦(主婦)の信者 家族との葛藤が信仰のバネに
1 元信者H(女性)の事例 /2 元信者I(女性)の事例
六 統一教会の教化方法の特徴
1 思考の枠組みの転換と強化 /2 献金と判断力 /3 信仰生活・宗教行為と記憶
第部 韓国に渡った女性信者
第八章 韓国社会と統一教会
一 問題の所在
1 脱会信者と現役信者の対比 /2 調査の経緯 /3 韓国における統一教会研究
二 韓国における統一教会
1 日本と異なるあり方 /2 宗教団体としての統一教会 /3 団体・事業活動の側面 /4 韓国における反統一教会運動 /5 教勢 /6 東南アジア出身の女性信者
三 韓国農村の結婚難と統一教会
1 韓国における男性の結婚難 /2 急増する国際結婚と発生する諸問題 /3 韓国人の結婚観と統一教会 /4 祝福に対する意味づけ /5 韓日祝福・日韓祝福の始まり /6 農村部における布教の方法 /7 統計資料に見る在韓日本人女性の数 /8 布教戦略としての韓日祝福
第九章 在韓日本人信者の信仰生活
一 在韓日本人信者の入信・回心・合同結婚式への参加
1 現役信者達 /2 調査対象者の基本的属性 /3 入信の経緯 /4 合同結婚式への参加から家庭出発まで /5 現役信者の入信・回心・合同結婚式までのパターン
二 祝福家庭の形成
1 書類提出から祝福、家庭出発まで /2 任地生活の役割
三 現役信者の信仰生活――A郡の信者を中心に
1 A郡を事例にする理由 /2 A郡に暮らす日本人女性信者の属性 /3 日本人女性信者の信仰生活 /4 特別な行事 /5 家庭での信仰実践 /6 日本での信仰生活と韓国での信仰生活
四 日本人女性信者にとっての祝福家庭
1 理想と現実 /2 地上天国実現のための家庭生活 /3 罪の清算としての生活 /4 祝福と結婚生活の本質 /5 信仰のない夫や舅姑との関係
五 A郡・B市・ソウルの信者達
1 三地域で出会った信者達 /2 三地域における信者の差異 /3 日本と異なる信仰のあり方
第一〇章 『本郷人』に見る祝福家庭の理想と現実
一 『本郷人』に見る祝福家庭の様子と教団の意図
二 『本郷人』について
三 『本郷人』に掲載されている証し
四 証しから見えてくる祝福家庭の様子
1 祝福家庭の様子 /2 日韓祝福の男性信者 /3 本郷人互助会の援助対象者 /4 調査事例との比較
五 統一教会的思考の枠組みの維持・強化に果たす『本郷人』の役割
1 信仰強化のテキストとして /2 復帰摂理の着実な歩み /3 原理の再確認 /4 証し、カウンセリング記事
六 『本郷人』に見る韓日祝福家庭の姿と信仰強化のあり方
おわりに
1 統一教会における信仰のリスク /2 韓国の祝福家庭 /3 本書で明らかにしたこと /4 本書でふれていない統一教会の諸問題
参考文献
あとがき
初出一覧
巻末資料
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