統一協会から愛する人を助けるために

統一協会から愛する人を助けるために(人間は機械ではなく、心で生きている)

マインド・コントロール研究所(著)


元メンバーとその家族による長く苦しい道のりの証言に聞きながら、統一協会のメカニズムと、脱出と回復のポイントを示す。

いのちのことば社

定価(本体2,200円十税)

「本書では、元信者や家族が、長く苦しかった道のりをありのままに説得力をもって語ってくれている。この本の魅力である。」(序文ょり)

櫻井義秀(北海道大学大学院教授)


内容紹介

キャンパスや駅頭で不気味に動いている統一協会。彼らはどのようにして学生や主婦の心をとらえ、恐怖心を抱かせて支配するのだろうか。元メンバーとその家族の証言に聞きながら、そのメカニズムを明らかにし、脱出のポイントを示す。


第一章  統一協会の教えパスカル・ズィヴィー

第二章  なぜ人々は統一協会に入るのかパスカル・ズィヴィー

第三章  元メンバーが見た統一協会のマインド・コントロールのメカニズム

第四章  恐怖心パスカル・ズィヴィー

第五章  思考停止パスカル・ズィヴィー

第六章  二重の自己パスカル・ズィヴィー

第七章  悲しみの神様パスカル・ズィヴィー

第八章  日韓歴史を利用する

第九章 「役事」の儀式についてパスカル・ズィヴィー

第十章  自分を取り戻して脱会するまでの道のり一家の証言

第十一章  救出カウンセリングとは何かパスカル・ズィヴィー

第十二章 「心情を奪われたら最後だ!」と言われて元会員の証言

第十三章  人間は機械ではなく、心で生きているパスカル・ズィヴィー

第十四章  リハビリテーションとは何かパスカル・ズィヴィー

第十五章  “Yes, I Can”(そうだ、私にはできる)―リハビリテーション中の脱会者のためにパスカル・ズィヴィー

第十六章 「統一協会の伝道は憲法違反」郷路征記


登録情報
• 単行本(ソフトカバー): 378ページ
• 出版社: いのちのことば社(2010/3/3)
• ISBN-10: 4264027926
• ISBN-13: 978-4264027928


小菅 剛
日本イエス・キリスト教団札幌羊ヶ丘教会牧師

元信者たちの「心」と向き合った一冊

「人間は機械ではありません。機械は故障しても、修理すればすぐ前のように使えます。しかし、人間はそうでありません。心が傷つくと、それを癒すためにとても長い時間がかかります」(本書二六六頁より)。
本書は、マインド・コントロール研究所所長パスカル・ズィヴィー氏が統一協会に取り組まれた二十三年間から生まれた本である。
統一協会に関する本は多く出版されているが、本書のような心の琴線に優しく触れてくる本は珍しい。それは、副題の「人間は機械ではなく、心で生きている」からも伺える。著者が、統一協会にではなく、そこに息づいている人間とその「心」に向き合おうとしておられる姿勢が本書の特色である。
本書は、十六章から成る。教理、入信、恐怖心、思考停止、悲しみの神様などについて理解が重要であると語られている。それは、相手を理解しなければコミュニケーションができないからである。
コミュニケーションこそが、統一教会から愛する人を取り戻し、続く家族関係、人間関係へと回復させるからである。破壊された心を回復させるには愛のコミュニケーションが必須条件である。
そのコミュニケーションの場は作られなければならない。「拉致監禁」と悪評受け易いが、「会話の環境作り」であって、心を取り戻すために必要であるとあり、同感である。特に、第九章「『役事』の儀式について」の中で記されている霊体験した信者の心を取り戻すには必要不可欠と思う。霊体験させてマインド・コントロールさせられた信者からのカウンセリングには保護が必要なのである。
さらに本書には、元メンバーの証言がたくさん載っている。組織の内部を見ることができる。勇気を出して語ってくださった方々に感謝したい。
第十六章の「統一協会の伝道は憲法違反」を書かれた郷路征記弁護士の論文は、苦しむ家族と取り組むカウンセリングの方々に勇気を与える一文である。


序 文

櫻井義秀

一 統一協会とは何か

韓国人の文鮮明によって一九五四年に創始され、一九五八年から日本で布教を開始した世界基督教統一神霊協会は、文部科学大臣所轄の単立宗教法人である。しかし、一般の宗教団体とは次の点で大きく異なる。

① 統一協会名、活動目的を明かさない勧誘(正体を隠す以上、布教とは呼べない)を行う。

② 霊界や因縁の恐怖を説き、壺や人参茶、宝飾品等を高額で販売する。

③ 勧誘と資金調達を一体化させた活動に信者を動員し、年間数百億円を文鮮明に献げる。

④ 約七千名の日本人女性信者を合同結婚式で渡韓させ、韓日の国際結婚を推進する。

いわゆる②の霊感商法と裁判は新聞等で報道されているが、一般市民は統一協会の数十にも及ぶ

関連団体(世界大学原理研究会、国際勝共連合、世界平和女性連合、(株)ハッピーヮールドとその販社など)に巻き込まれて、初めて統一協会の活動の幅と問題の深刻さに気づく。しかし、問題の本質、すなわち、統一協会とは何であり、どのよぅにしたら問題が解決するのか、この肝心な情報がなかなか伝えられていない。

私は、前半の問いには『統一教会――日本宣教と韓日祝福』(中西尋子と共著、北海道大学出版会、二〇一〇年)で答えているが、後半の問題にふれることはできなかった。

本書は問題解決の方法をストレートに述べる。著者のパスヵルズィヴィーさんは二十年以上も統一協会問題の解決のために献身的な働きをしてきた人であり、その経験からこう言い切る。統一協会のメンバーは統一原理という教義とスケジユール管理によって、自分自身に向き合う時間と力を奪われた人たちである。メンバーは、自分がわからないこと、自分で決めなければいけないことに遭遇すると、思考停止.判断停止を行い、目上の人に判断を仰ぐ。なぜなら、自分で考え、決断したことが人間の堕落、摂理の失敗と教えられ、メシアに従うこと、メシアにつながる上位者(アベル)の言うとおりにすることを信仰として植え付けられてきたからだ。幹部から末端信者までこの思考ハタ―ンは一貫している。

家族やカウンセラーに問われるのは、パ夕ーンからはずれ、教団の外に出ることを怖れる信者たちと、どのように対話を開始し、信者が自らの力で自分自身に向き合う力を回復していくか、である。

二回復する力

統一協会の人たちは自分のことよりも家族のこと、神のことを思い、崇高な目的のために自己犠牲をいとわない「いい子」「いい人たち」だった。だからこそ、統一協会の勧誘に狙われた。入信したのはたまたまであっても、「自己実現」「家族との葛藤」「社会不信」といった入信動機が学習や活動の過程で形成され、そうした問題を解決しない限り脱会できないし、一般社会に戻ることに意味はないと信者は考えてしまう。統一協会の活動実態を知って疑問をもったとしても、メシアを信じる以外に道はあるのかと、堂々巡りの思案が続く。

では、どうやって自分を取り戻せたのだろうか。本書では、元信者や家族が、長く苦しかった道のりをありのままに説得力をもって語ってくれている。この本の魅力である。

親が子どもに真剣に向き合う。どのようにして統一協会に入り、どのような活動をした結果、眼前の姿になったのかを理解し、親子関係を再確認するために忍耐の時を過ごす。そのような親の情愛を体得することで、子どもは真の父母と子女という文鮮明との擬制的親子関係の欺瞞に気づく。そして、家族への信頼を回復することで自己への信頼も回復できる。

自己への信頼とは、家族に必要とされる自分を確認することである。真の父母に受け入れてもらうためにボロぞうきんのようになるまで必死で生きなくともよい、そのままの自分でよいことがわかる。ストンと抜ける瞬間である。ただし、抜けても行動の癖はそのままである。ここから、さらに長いあいだ、自分を見つめ、自分を作りあげる時間がかかる。

しかし、脱会の仕方やリハビリの仕方は様々であっても、家族社会のために働くことで「役に立つ」自分を実感し、人生を楽しむ余裕すら生まれてくるものだ。誰であっても回復する力を決して失ってはいない。暖かな眼差しと深い信頼が埋もれた力を呼び起こす。

本書には、回復のための道筋と勘所について経験豊かなカウンセラーと体験者によるアドバィスが記されている。また、統一協会の勧誘は日本国憲法に定められた信教の自由を侵害していることが郷路征記弁護士にょって明快に説明され、朴永基牧師は日韓の歴史認識が統一協会にょって恣意的に利用されていることを指摘している。

多くの方が本書から希望を読み取られることを期待したい。

(北海道大学大学院教授)