検証・統一教会=家庭連合─霊感商法・世界平和統一家庭連合の実態
山口広[著]
四六判並製 392頁 ISBN: 978-4-8461-1706-1
統一教会の被害にあった人は、みなまじめで、素直な人たちだ。加害者でありつづける信者たちも、かつてはまじめで素直な嘘をつけない人だった。統一教会は宗教を組織的な資金集めの手段とし、人集めの道具に悪用している。反社会的な犯罪行為・違法行為を正しいこと、信者としてなすべきことと思い込ませ日々実践するような人格に彼らを変容させている。世界平和統一家庭連合(略称「家庭連合」)と名称を変えて、文鮮明 Moon Sun Myung の死で内部分裂をしても巧妙に仕組まれる霊感商法の手口は変わらない。
本書は、1993年春に刊行した『検証・統一協会──霊感商法の実態』をその後24年間の統一教会の被害救済の活動を踏まえて、ほぼ全面的に書き直した。(2017.4)
山口/広
1949年福岡県生まれ。1972年東京大学法学部卒業。1978年4月弁護士登録(第二東京弁護士会所属・東京共同法律事務所在籍)。1987年5月全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長(現在まで)。2005~6年度日弁連消費者問題対策委員会委員長。2009年11月~2013年8月内閣府消費者委員会委員。2013年5月MRI被害弁護団弁護団長。この外、山一抵当証券被害弁護団、ジーオーグループ被害弁護団、カルテのないC型肝炎被害弁護団の弁護団長や日航機墜落事故(御巣鷹山)と中華航空機墜落事故(名古屋)の被害者団の代理人などを担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
はじめに
第1章 文鮮明の死と一族の分裂
文鮮明ファミリーの分裂と崩壊
統一教会の名称変更とその後
七男亨進の分派・サンクチュアリ教会
第2章 霊感商法の何が問題か
霊感商法とは
統一教会の霊感商法
被害回復活動
霊感商法の背景
正体隠しの活動
統一教会の伝道手口の違法
第3章 なぜ信者になるのか
自己啓発センターと偽って
入信パターン
信者への道──典型例
「教育」のテクニック
誘い込みのテクニック
「伝道」の問題点
第4章 霊感商法の実態
勧誘の手口──街頭アンケート
印鑑・念珠から献金まで
霊感商法の商品の数々
被害例──四十歳既婚女性・藤沢良子さんの場合
七億円余の被害──稲垣家の場合
統一教会側の弁明
ノルマに追われる日々──販売員の実情
統一教会信者の悲鳴
第5章 霊感商法の背景と歴史
霊感商法の創世期
霊感商法の全国展開
霊感商法の社会問題化
被害救済を妨げる陰湿な手口
警察による相次ぐ摘発と新世事件
検察官の論告
犯罪の組織性を認めた判決
統一教会の組織的犯行であること
沖縄天守堂の店長の告白
徳野会長名義の指導文と疑問
第6章 統一教会(家庭連合)とは
統一教会の信者数と歴代会長
家庭連合へ名称変更と最新の陣容
常に社会問題を引き起こす
文鮮明の経歴と日本
実態と教義──神戸事件から
危険な教義──二分法で惹きつける
統一教会の内部構成
統一教会の財源国──日本
第7章 統一教会の世界戦略
韓国で──ヨイド島のビルと兄弟の抗争
〇八年韓国総選挙立候補でわかったこと
日本の資金を使う国
アメリカ・EU・ロシアで
中国、北朝鮮へ
勝共連合など統一教会の多様な顔
文鮮明の日本入国
マルエス作戦──議員との癒着
世界平和女性連合(女連)
天地正教
日韓トンネルの実情
日韓トンネルの展望
原理研究会
統一教会に無自覚な企業
第8章 霊感商法と統一教会の未来
霊感商法の今後
定着経済
より悪質、巧妙に
借金地獄の統一教会
藤井会長(当時)からの手紙と三〇〇〇万円の「聖本」
清平・先祖解怨による搾取
次々と分派が
第9章 弁護士としての法律上の対策
支払金の返金交渉
霊感商法被害者の訴訟
既婚女性Mさんの裁判
高齢の未亡人Dさんの裁判
二人の元信者の献金被害
離婚した夫が元妻による献金等被害を回復した裁判
訴訟の結果と未払い賃金・婚姻無効
相談・交渉そして訴訟
青春を返せ訴訟
信者と家族との話合い
第10章 統一教会・カルト対策の今後
いまもあるカルトの危険
日本の貧しい対策の実情
なされるべき対策
新しい動きの希望
事態は切迫している
統一教会関係年表
あとがき
第8章 霊感商法と統一教会の未来
295-297頁
… 信者の悲惨な話を聞くとまことに気の毒という外ない。
東京都渋谷区松濤にある統一教会本部の土地 · 建物には、一九九一年五月付で韓国第一銀行の一三億四〇〇〇万円の根抵当権が新たに設定された。この銀行は、これ以前に同じ不動産に五二億四〇〇〇万円の根抵当権を設定していた。表に見えるこれらの借金はまさに水山の一角なのだ。一体ゝどうしてこのような馬鹿げたHG(借金による献金)を始めたのだろうか。
文鮮明の厳しい毎月のノルマ、この実現を絶対視して下部組織から搾り取り続けた古田元男ら幹部の責任である。幹部信者らは、長期的に見て、このような借入れの増殖が組織の破綻につながることは判りそうなものだ。ところが、文 · 古田そして中堅幹部の誰もが現実を見ようとしなかったのだ。メシア卩文鮮明のやることだから、そのうち「神風」が吹くと幹部から末端まで信じ込んでいたとしか思えない深刻な病巣がある。
藤井会長(当時)からの手紙と三〇〇〇万円の「聖本」
九三年一月十六日、私は、差出人「世界基督教統一神霊協会藤井羑雄」の内容証明郵便を受け取った。当時数十名の霊感商法被害者の被害回復交渉を担当していた私は、当方の返金要求に対し副会長が何か返事をしてきたのかと思いつつ開封した。ところが、文面はおどろくべきもの95だった。手書きの文書だ。統一教会会長兼天地正教会長の藤井羑雄の名義だった。
第一に、神山威から会長を引き継いだ彼は「統一教会会長として良心に従って、信義を守るように誓います。現在までの統一教会の部下の不始末、説明不足、誤解をお許し下さい」という。
第二に、「出来る限り負債額四千億円(統一教会三千二百億円、天地正教八百億円)を解決」したいが、「根本的に整理し、再出発」するので、「統一教会並びに天地正教の支払いを一時停止」する。「静かに見守り下さい」ともあった。統一教会と天地正教とが実質的に同一であることや四〇〇〇億円の負債を認めたうえで、再出発するので支払いを止めると一方的に宣言していた。
私たちは、一月二十六日、この新会長作成文書について意味を明らかにするよう求める公開質問状を発送した。一月末、統一教会の法人登記上も代表者は藤井羑雄に変更されたものの、藤井氏からの回答はなかった。統一教会の借金のための窮迫ぶりを象徴するできごとではあった。
資料18 東京スポーツ2000年4月8日付
統一教会『霊感商法』の驚がく新事実
̏文鮮明本〟一冊 3千万円
『献金の見返り』と信者に手渡す
更に、二〇〇〇年から二、三年間、日本統一教会のトップである劉大行は、三〇〇〇万円を献金して文鮮明のみことば集である「聖本」をさずかるようにという指示を出しつづけた(資料18)。日本の組織で三六〇〇冊、つまり一〇八〇億円を集めよという「摂理」が末端にいたるまで信者の家計をしぼりあげた。これを達成するため末端で如何にひどい事態が発生したか山ほどの資料がある。ところが二〇〇四年以降には、一冊四三〇万円の「天聖経」なるみことば集をさずかるようにとの新たな「摂理」が下されて信者は苦しめられた。
清平 · 先祖解怨による搾取
二〇〇〇年頃から、ソゥルからバスで約二時間の清平に日本人二、三千人を順次動員し、体の全体をたたいて体内の悪霊を払う儀式を行うようになった。それとともに地獄で怨念をかかえて苦しみ続ける先祖を中間霊界に引き上げて助けることで、その地獄で苦しむ悪霊がもたらす災いを免れるための先祖解怨式がなされるようになった。これを仕切ったのが韓鶴子の母親(文鮮明の信者だった)が霊界から降りてくるという金孝南。彼女らがつくりだした献金獲得の仕組みは次のようなものだ(表9)